ごはんと瞑想と日々のうたかた

おいしいごはんと、瞑想のようなもの思いから浮かぶ言葉と、日々のささやかなできごと。そんな生活の切れ端と、たまにディープに心のことを、思いつくままにつづります。

人はどのようにして言語を習得(もしくは認知)するのか?

言語を習得するということは、自分の知覚するものと言語とがダイレクトに結びつくということなんだな、という、ごくごく当たり前の結論に落ち着く。

手っ取り早く、自分の言いたいことを言葉にできるようにするためには、文法を学ぶより、「感覚で落とし込んだ基本パターンの構文」に必要な語彙をオンしていくというやり方が、一番早そう。

(もちろん、会話にはリスニングという別のスキルが必要とされるから、この限りではないけれど、それはまた、改めて)

 

一言で言えば「普遍文法」と名付けられた生得的な言語能力により、抽象から具体へとトップダウンに習得されると考えられるのが生成文法であり、生後の学習により具体から抽象へとボトムアップに習得していくと考えるのが認知分布である。

繰り返すが、チョムスキーは言語習得というものを、普遍文法からまず文法規則が習得され、具体的な文が産出されるという「トップダウン」のプロセスであると考えており、語彙の方は生後、普遍文法とは関係のない学習によって1つ1つ覚えていかなければならないと考えている。
これに対し、ラネカーの認知文法は全く逆の考え方をしている。

①まず子供は大人の発話から、Gimme milk.という文を「1つの固まり」として覚える。
②同様にGimme juice. という文も固まりとして覚える。
③ある日、それらの文の共通性が見いだされ、やがて Gimme N1 と言えば「N1をちょうだい」という意味であることに気づく。
④このように具体的な文に触れながら徐々に共通性が見いだされ、Gimme milk.(ミルクをちょうだい)→ Gimme N2 N1 (N2にN1をちょうだい)→(N3)V N2 N1.(N3がN2にN1をあげる)」と、ボトムアップに二重目的語構文を作り上げていく。

再度確認しておこう。
生成文法の考え方では、言語習得とは「普遍文法が周囲の言語刺激を元に、徐々にその言語の文法を形成し、それに語彙が組み入られて具体的な文を産出していく」という、トップダウンのプロセスであると考える。一方、認知文法では、「言語習得はここの文から徐々に文法規則が抽出される」という、ボトムアップのプロセスであると考える。

また、習得における文法と語彙の区別も重要だ。生成文法では文法規則は普遍文法により導き出されるが、語彙は1つ1つ学習して覚えていくものと両者をはっきり区別する。しかし認知文法では、語彙も文法も学習により1つ1つ学習していくものと考え、両者を区別しない。
さらに生成文法は持って生まれた普遍文法の役割を何よりも重視するのに対し、認知文法は生まれた後に、その言語の具体的な用法に触れながら学習することが重要であると考える。そのため、認知文法の考え方は「用法基盤モデル(usageーbased model)」と呼ばれるのである。

この文法を導き出すプロセスは、さきにGimme milk. のところで述べた、二重目的語構文と同じである。すなわち「出た」「食べた」「寝た」など具体的な用法を何度も耳にしていく中で、帰納的に「-eる→-eた」という規則を学習したと考えるわけだ。
もちろん覚えていたものをそのまま使うのか、それとも規則から導き出すのかは、状況によって異なる。「出た」のように頻繁に使うものであれば、覚えていてそのまま使うことが多いだろうし、「永らえた」などのように、日頃耳にすることがないものや初めて使う場合には、規則から導き出すことが多いであろう。
ということは、認知文法の考え方では、脳内には「出ない」「出た」「出なかった」のようおに、頻繁に用いられる様々な活用形も記憶されていると考えるため、脳内にはかなり
詰まっているということになる。

もう一度、言語使用と認知能力について時系列的にまとめておこう。

①「比較」により、同じモノ(milk)や動作(give)がまとめられ、カテゴリーが形成される。

②「共通性の抽出」により、Gimme milk. や Gimme juice. からGimme N.という文法規則を構築する。

③「連合」により、Gimme N という「形式
」と「Nをください」という「意味」がマッピングされる。

④「定着」により「形式」と「意味」とを持った語や文法規則が自動化され、自由に使えるようになる。

⑤「合成」により、語や文法規則が組み合わされて、新しい文が作れるようになっていく。例えばGimme Nという文法規則とwaterという語が組み合わされてGimme water.という新しい文が作れるようになっていく。

わかる!!日本語教師のための応用認知言語学/ 荒川洋平 森山新

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